PalantirのFDEは何をしているのか。現場で問われる「課題を選ぶ力」
FDEを育てるなら、AIツールの操作に加えて「どの課題を解くか」を決める練習が必要です。その役割を考える材料として、Palantirが2020年11月2日に公開したFDSE(Forward Deployed Software Engineer)、Brian氏へのインタビューを紹介します。生成AIが広く普及する前の発信として、FDEの仕事の土台を読む記事です。
原文の要点と短い引用訳
Brian氏は、FDSEを顧客の現場に入り、Palantirの既存基盤を使って問題を解くソフトウェアエンジニアと説明しています。利用者との実装、本番環境の品質管理、現場で得た知見の製品チームへの還元にも触れています。
「FDSEは、一つの顧客組織が複数の機能を活用できるようにすることに注力する」
これは原文の一節の当社訳です。本人が難しさとして挙げるのは、多数の課題から最も価値の高いものを選ぶことでした。原文:Palantir公式ブログ(2020年11月2日)
本質の見解:最初の成果物を「課題の一枚紙」にする
SES・SIerがFDE育成を始める際、研修の入口を「指定されたアプリの完成」に置くと、課題設定の練習が抜け落ちます。そこで、実装前に次の四点を一枚にまとめる演習を提案します。
- 誰が、どの場面で困っているか。
- 現在の作業と、判断に必要な情報は何か。
- 改善したかどうかを、何で確かめるか。
- 今回扱う範囲と、次回以降に回す範囲はどこか。
例えば「問い合わせ対応にAIを使いたい」という相談なら、すぐにチャット画面を作る前に、問い合わせを分類します。過去の回答を探す時間が長いのか、回答の承認待ちが長いのかで、必要な仕組みが変わるからです。前者なら検索や下書き支援、後者なら承認の手順や権限の見直しが候補になります。
これは説明用の仮想例です。「対応時間を短くする」を目標にする場合も、全体の平均だけではなく、対象業務の件数、作業時間、手戻りを分けて確認します。対象を狭めるほど、試作前後の変化と、残った問題を判断しやすくなります。
育成の評価に、顧客への説明を組み込む
研修の最終発表では、動くものに加えて「なぜこの課題を選んだか」「利用者の意見で何を変えたか」を説明してもらいます。技術的に優れた実装でも、使う人や使用場面が曖昧なら、追加で聞くべきことが残っています。
評価者には、講師役のエンジニアと業務担当役を置くとよいでしょう。前者は保守性や権限設計、後者は日常業務で使えるかを確認します。受講者には、両者の指摘を受けて一度修正する時間も用意します。一回の発表で終えるより、認識のずれを修正する経験を積めます。
また、顧客ごとに異なる業務知識を、一人で最初から持つことは求めません。不明点を記録し、適切な相手に聞き、回答を設計へ反映できることを評価します。育成担当者は、その行動を観察できる課題を用意する必要があります。
最初の研修では、実際の業務を一つ題材にし、ヒアリング、課題の一枚紙、小さな実装、利用者による確認までを一巡させる。それが、顧客の課題発見から実装・定着までを担うFDEに向けた、具体的な一歩になります。