海外FDE動向

AWSがパートナー企業へ広げるFDE——SES・SIerが整えたい実装体制

株式会社本質 · · 約3分

FDE(Forward Deployed Engineer)を育てるとき、研修内容と同時に考えたいのが、学んだ人が顧客の現場で実装を進められる体制です。AWSの発表は、この組織づくりを考える材料になります。

公式発表の要点

AWSは2026年6月30日、パートナー企業向けの「Partner-Led Forward Deployed Engineering Motion」を発表しました。パートナー内に継続的な実装能力をつくる施策で、認定資格や研修プログラムそのものとは区別されています。

初期案件ではAWSのエンジニアがパートナーと実装に入り、次の案件でも使える知見や仕組みを残す方針です。開始時の対象は限定されたパートナーで、検証を経て対象を広げると説明しています。詳細はAWSの原文で確認できます。

本質の見解

この発表から私たちは、SES・SIerのFDE育成を「個人の習熟」と「会社として案件を進める準備」の両方で設計する必要があると考えます。以下は、発表を踏まえた日本企業向けの提案です。

最初の案件では、担当者と使える時間を決める

AIツールを学んでも、顧客へのヒアリング、試作、評価の時間が確保されなければ実践につながりません。最初に決めたいのは受講人数よりも、どの顧客のどの業務に、誰が何時間取り組むかです。

例えば、問い合わせ対応の改善なら、顧客と要件を整理する担当、実装する担当、回答品質を確かめる担当を置きます。兼務でも構いません。判断が止まったときの相談先と、顧客側で試作を確認する人まで決めると、学習した内容を案件で試しやすくなります。

全員が同じ範囲を担う必要もありません。AIを日常業務で使う段階、実装を担う段階、業務課題から設計する段階を分け、現在地に合う役割を渡すことが育成責任者の仕事になります。

「動いた」から一歩進めて、業務での合格条件を置く

試作の評価が「回答できた」で終わると、顧客は導入を判断できません。問い合わせ対応であれば、回答案の作成時間、担当者による修正の割合、誤案内の件数を導入前後で比べます。

目標値は顧客と決めます。時間が短縮されても確認負担が増えれば、業務全体の改善とは限りません。判断に迷う問い合わせを人へ戻せるか、参照情報が古い場合にどう気づくかも、最初の評価に含めます。こうした条件を顧客と話し合う経験が、FDEに必要な課題設定の練習になります。

次の案件に残すのは、判断の理由

社内に残したいのはソースコードだけではありません。「なぜこの業務を選んだか」「どの回答を不合格にしたか」「誰が運用を引き継いだか」を、短い記録にします。成功した条件と、適用できない条件の両方があると、別の担当者が提案するときにも使えます。

ただし、顧客のデータや個別の業務情報を、そのまま他案件へ持ち込めるとは限りません。顧客固有の情報と、自社で再利用できる評価手順や設計の考え方を分けて管理します。

最初の一歩として、既存案件を一つ選び、業務の担当者、試す範囲、合格条件、担当エンジニアの時間を一枚にまとめてみてください。そこまで具体化すると、研修で何を身につける必要があるかも見えてきます。

株式会社本質は、SES・SIer向けのFDE育成とAX・AI実装支援を提供しています。人材育成と現場実装のつなぎ方は、本質のホームページをご覧ください。